都会の害獣といえばネズミを思い浮かべます。山間部の害獣といえば、人を襲うクマや農作物を荒らすイノシシやサル‥そして、特に最近問題となっている害獣が鹿のようです。
では、一見、愛らしい鹿のどこが問題なのでしょうか?
鹿もイノシシやサルと同様に農作物を荒らす面はありますが、さらに大きな問題があるようなので、自分なりにまとめてみました。
鹿は、山にある木々の新芽を食べてしまうことの他、新芽が出ない冬には、大きく育った木の皮(樹皮)を食べることにより、山にある木を枯らしてしまうことが大きな問題となっています。
まず、鹿に木の表面の皮(樹皮)を食べられただけで、木は枯れてしまうのかどうか触れたいと思います。
木の種類にもよりますが、多くの木々は樹皮を剥がされるとやがて枯れてしまう運命のようです。
樹木は冬の間は葉を散らして光合成ができずに生長が止まります。やがて春になり新しい葉が茂ると葉の光合成によって作られる養分が樹皮を通して根に運ばれます。しかし、木の皮(樹皮)からの養分の通路が絶たれると根の生育が止まってしまい、根は大地から水を吸い上げる力が無くなり、やがて枯れてしまいます。
木を枯らす為に木の幹をぶった切ったとしても、春には新芽が出てきて復活します。木を枯らすには、時間はかかるものの樹皮を剥ぐほうが効果的だったりします。こうした生態を利用する林業の間伐手法で「巻き枯らし」という方法があるくらいです。
■樹皮を食べられた木はやがて枯れる。
話しを戻しますと、鹿の食害が増えて、本来、山にあるべき木々が枯れて減少することにより、山自体の保水力が低下していきます。その結果、土砂崩れや洪水が起きやすくなったり、川の水がミネラルが不足になり、やがて流れつく海に棲息する魚や漁業に影響があったりと様々な問題が起こります。
それでは、何故、シカによる木々の食害が増えてしまったのでしょうか?
●林業の衰退が挙げられます。将来を見越して高度経済成長期に植林したものの、安い輸入木材の影響により、国産の木材が売れず、植林された木々は間伐などの手入れがされず放置されました。その結果、密集した植林の中は暗く、鹿のエサとなる下草が生えなくなり、樹皮を食べる機会が多くなってしまった。
●温暖化の影響により冬でも鹿が活発にエサ(樹皮)を求めること。子鹿の生存率の上昇。
●生態系の崩れ(人の手によってオオカミが絶滅し天敵がいなくなった等)により、鹿が殖る条件が揃った。
●イノシシに比べると保護の対象になりやすいこと。(愛くるしい。人に危害を加えない。)
●平地ばかりでなく過剰な開発により、鹿を山へと追いやったこと。
等々が考えられます。
こうした様々な因果関係を挙げてみると、鹿が害獣扱いとなってしまった要因をたどると、人間の手によるところが大きいようです。